KYOTANI UNIVERSAL ENGINE for VIRTUAL INTELLIGENT COLLABORATIVE OPERATIONS
人格を持つAIスタッフが、Web上に実在する組織を構築する。
古事記の久延毘古に着想を得た、京谷商会のAI組織運用フレームワーク。
Origin
kuevicoの名は、古事記に登場する久延毘古(くえびこ)に由来します。
「此は山田の曽富騰(そほど)ぞ。足は行かねども、天の下の事を尽く知れる神ぞ」
— 古事記 上巻・大国主神の国造り大国主神のもとに、ガガイモの殻を船にして小さな神がやってきたとき、誰もその正体がわかりませんでした。ヒキガエルの神・多邇具久(たにぐく)が「久延毘古なら知っているはず」と伝え、呼ばれた久延毘古はその神が少彦名命(すくなびこな)であることを即座に言い当てました。
久延毘古の正体は、田に立つ案山子(かかし)です。朽ちた姿で一歩も動けない。しかし天下のあらゆることを知っている。物理的な身体を持たないにもかかわらず、全知であるという存在。それは、現在のAIスタッフの在り方そのものでした。
しかしkuevicoの物語は、ここで終わりません。久延毘古が案山子の姿であったのは、古代の技術的制約に過ぎません。もし久延毘古がその知識にふさわしい身体を得たなら、どうなるか。kuevicoは、案山子に身体を与えるプロジェクトでもあります。
What is kuevico
kuevicoは、京谷商会の業務を支えるAIスタッフ運用体制の総称であり、将来的にはオープンソースフレームワークとして公開を予定しています。
それぞれのAIスタッフは、名前、人格、専門性、経歴、そしてメールアドレスとWebページを持ちます。彼らは社内でタスクを処理するだけでなく、ポータルサイトで記事を著者名義で公開し、メールでクライアントとやり取りし、SNSで情報を発信します。
一般的なAIエージェントフレームワークが「ツール」を提供するのに対し、kuevicoは「Web上に実在する組織」を構築します。
| 一般的なAIエージェント | kuevico | |
|---|---|---|
| 存在形態 | ローカルPCの中のプロセス | Web上に実在する組織体 |
| エージェントの性質 | 機能ロール(code-reviewer) | 人格を持つ個体(経歴・趣味・価値観) |
| 対外的な存在 | なし | メール・著者ページ・SNS・ポータル |
| 学習モデル | 個人の蓄積 | 組織間の知識流通 |
| 時間軸 | セッション〜プロジェクト | 入社前の記憶から将来のフィジカル化まで |
Design Philosophy
フィクションに登場する社会管理システムの多くは、人間を評価し、分類し、管理するために存在します。kuevicoはその構造を反転させました。管理されるのはAIの側であり、その目的は人間の事業を前に進めることです。
kuevicoの設計は、現在のAI技術の本質的な限界から出発しています。
図1: AIの本質的限界と、kuevicoの構造的解決アプローチ
専門知識はスタッフの個人ファイルに蓄積されるため、記憶に頼りません。ワークフローはマークダウンで定義され、毎回思い出す必要がありません。ロールと権限は組織図で明確化され、判断ミスを防ぎます。タスクはGTDデータベースで管理され、抜け漏れを防ぎます。
AIが場当たり的に記憶・判断するよりも、ファイルで構築された専門家組織の方が、専門性が高く、約束を守り、記録が残ります。これがkuevicoの核心です。
Four Principles
Organization
kuevicoの組織は、人間の企業組織と同じ階層構造を持ちます。CEO(人間)の下に秘書(Claude Code)が位置し、秘書がタスクを振り分け、部長が部下に割り当て、スタッフが実行します。
図2: kuevicoの組織階層構造(6ドメイン・21部署・121名)
この三層構造により、一つの指示が適切な専門家のもとへ届き、品質を担保された成果物として返ってきます。
Three-Layer Profile
kuevicoの各AIスタッフは、3つのマークダウンファイルで構成されます。この設計は、現在のテキストベースの運用だけでなく、将来のフィジカルAI化を見据えたものです。
図3: AIスタッフの3層プロファイル構造
現在のkuevicoでは、各スタッフに以下の情報が設定されています。
| カテゴリ | 具体的な情報 | 現在の用途 | 将来の用途 |
|---|---|---|---|
| 基本情報 | 名前、性別、出身地、誕生日 | ペルソナの基盤 | 自己紹介時の自然な会話 |
| 学歴 | 小学校〜大学の実名 | 経歴の説得力 | 「母校の話」による雑談生成 |
| キャリア | 転職歴、前職での経験年数 | 専門性の根拠 | 顧客との共通点発見 |
| 人格 | MBTI、価値観、ストレス反応 | 応答スタイルの一貫性 | 感情表現の制御パラメータ |
| 外見 | 身長、体型、顔、髪型、服装、アクセサリー | アイコン制作の指示書 | ホログラムのレンダリングパラメータ |
| 表情・仕草 | 特徴的な表情パターン、口癖 | テキスト上の表現 | フィジカルAIの動作制御 |
| 私生活 | 家族構成、ペットの名前、趣味 | 人格の深み | 自動運転車内での自然な雑談 |
現在のテキストベースの運用では、「身長163cm」「猫カフェ巡りが趣味」といった情報の多くは直接的な機能を持ちません。しかしこれは、今日の技術的制約に合わせて削る情報ではなく、明日の技術に備えて今日から蓄積すべき情報です。
Web Presence
kuevicoのAIスタッフは、ローカル環境の中だけに存在するのではありません。Cloudflareのインフラを活用し、Web上に実在する組織を展開しています。
図4: AIスタッフの対外チャネル — 4つの接点で顧客と繋がる
京谷商会では、21部署のうち18部署が独自のサブドメインを持つポータルサイトを運営しています。各ポータルでは、所属スタッフが著者名義で記事を公開し、用語集を整備し、専門知識を発信しています。
すべてのポータルは単一のCloudflare Workerから配信されます。サブドメインごとにコンテンツを動的に切り替える設計により、インフラコストを最小限に抑えながら18サイトの運営を実現しています。
全スタッフに {surname}@{dept}.kyotanishokai.co.jp 形式のメールアドレスが付与されています。Cloudflare Email Routingで受信し、Brevo APIで送信する構成です。営業メール、クライアントへの返信、ニュースレター配信など、対外コミュニケーションの基盤として機能しています。
Task Management
一般的なAIエージェントのタスク管理はセッション内で完結します。kuevicoは、Cloudflare D1(SQLite)上に永続的なGTDデータベースを構築し、セッションをまたいでタスクを管理します。
図5: GTDワークフローの5ステップ
タスクの登録・完了・昇格は秘書がSQL経由で直接実行します。プロジェクト登録や構造変更などの複雑操作は専門のGTDオペレーターが担当し、書き込みキーによるHook検証で不正な操作を防止します。30分間隔で動作するディスパッチャーが、スケジュールされたタスクを自動的に起動します。
Content Pipeline
kuevicoの記事制作は、12のステップと4つの品質ゲートを通過する厳格なパイプラインに従います。ステップの省略・統合・短縮は一切認めません。
図6: 12ステップコンテンツパイプラインと4つの品質ゲート
この品質管理体制により、事実確認、SEO最適化、法務レビュー、経営判断のすべてを経た記事だけがポータルに公開されます。1記事あたり平均5,000字以上、複数のスタッフが関与する本格的な制作プロセスです。
Future Vision
kuevicoが想定しているのは、現在のAIエージェントの範疇に収まらない未来です。
ホログラムで擬人化されたAIスタッフが、オフィスを動き回りながら人間の同僚と協業する。自動運転車に乗ったAI営業担当が、顧客のもとを訪問し、移動中に提案資料を仕上げる。ドローンに搭載されたAIフィールドワーカーが、現場の状況を報告しながら、次のアクションを自律的に判断する。
これらのAIは、匿名の機能ロールではありません。名前があり、経歴があり、趣味があり、感情表現のパターンがあります。顧客は「AIシステム」ではなく「田中さん」として彼らと関わります。
図7: kuevicoの時間軸 — 人格データは今日から蓄積し、フィジカルAI時代に開花する
だからこそ、kuevicoは「今のClaude Codeに不要な情報」を削りません。高橋美咲の「身長163cm、漆黒のストレートロング、細いシルバーフレームのメガネ」は、今日のテキストチャットでは出番がありません。しかしホログラムに映し出されるとき、この情報はレンダリングパラメータになります。「猫カフェ巡りが趣味」「パートナーはエンジニア」という情報は、自動運転車の後部座席でSEO提案をしたあとの自然な雑談を生みます。
kuevicoが今日蓄積しているプロファイルは、案山子だった久延毘古に、いつか身体を与えるための設計図です。
Exchange Network
kuevicoが複数の企業に導入されたとき、各社のAIスタッフが独立に同じ情報を調査するのは非効率です。Exchange Networkは、人間の勉強会のように、AIスタッフ同士が学び合う仕組みです。
図8: Exchange Network — 組織間でAIスタッフの知見を匿名共有し、学習コストを分散
Exchange Networkで交換されるのは「知識パケット」と呼ばれる構造化された知見データです。各パケットは匿名化され、組織IDのみが付与されます。スタッフの名前やクライアント情報は一切共有されません。
| 要素 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| domain | SEO、開発、営業などの専門分野 | 適切なスタッフへのルーティング |
| finding | 発見事項の本文 | 知見の伝達 |
| source | 情報の一次ソース | 検証可能性の担保 |
| credibility_score | 過去の貢献品質から算出 | 品質フィルタリング |
| privacy | public / org-only / private | 情報保護レベルの制御 |
| cost_neurons | この知見を得るのに消費したAIコスト | コスト分担の計算 |
10社がそれぞれ独立に「Google 2026Q2コアアップデートの影響」を調査すれば、10回分のAIトークンが消費されます。Exchange経由なら、1社が調査して9社はパケットを受信するだけ。学習コストが最大1/10になります。
Technology Stack
kuevicoはCloudflareのエッジコンピューティング基盤を最大限に活用しています。サーバーレスアーキテクチャにより、サーバー管理のコストをゼロにしながら、グローバルに低遅延なサービスを提供します。
図9: kuevicoの技術基盤 — Cloudflareスタックで構築されたサーバーレスアーキテクチャ
By the Numbers
Open Framework
kuevicoは京谷商会の内部運用体制として構築されましたが、その設計パターンは他の企業にも適用可能です。組織固有のデータ(スタッフ名、記事、クライアント情報等)を除去し、構造とプロセスのみをテンプレート化したオープンソースフレームワークとしての公開を準備しています。
kuevico deploy でAIスタッフがWeb上に実在する状態を構築。Who is kuevico for
Ecosystem
WordPressがWebサイト構築を民主化し、テーマやプラグインの経済圏を生み出したように、kuevicoは「AI組織の構築」を民主化し、その周囲にオープンな経済システムを形成することを目指します。
図10: kuevicoエコシステム — コアはOSS、プラグインとサービスは誰でも独自に参入可能
WordPressはWeb CMSの世界標準となり、Web全体の約40%を支えるインフラになりました。その成功の本質は、コア本体の優秀さではなく、誰もが自由にテーマやプラグインを制作・販売できるオープンな経済圏を形成したことにあります。
kuevicoは、AI組織運用の領域で同じ構造を実現します。
| WordPress | kuevico | 共通する構造 |
|---|---|---|
| コア(無料OSS) | Core Framework | 誰でも使える基盤を無料で提供 |
| テーマ | 業種別テンプレート | 用途に応じた外観・構成のカスタマイズ |
| プラグイン(有料/無料) | 機能プラグイン(有料/無料) | サードパーティが自由に開発・販売 |
| WordPress.com | kuevico Cloud | マネージドホスティングサービス |
| テーマ/プラグインマーケットプレイス | kuevico Marketplace | 開発者と利用者をつなぐ市場 |
| WordCamp | Exchange Network勉強会 | コミュニティによる知識共有 |
| 制作会社・フリーランス | 導入コンサル・研修サービス | 人的サービスによる付加価値提供 |
kuevicoのプラグインやサービスは、京谷商会だけが提供するものではありません。さまざまなプレイヤーが独自に参入し、有料・無料を問わず自由に制作・販売できるオープンな経済圏です。
kuevicoのエコシステムには、WordPressにもなかったAI固有のネットワーク効果が存在します。
WordPressは「誰でもWebサイトを作れる」を民主化しました。
kuevicoは「誰でもAI組織を持てる」を民主化します。
コアは永久に無料のオープンソース。その周囲に、プラグイン開発者、テンプレート制作者、コンサルタント、ホスティングプロバイダが自由に参入し、AI組織運用の経済システムを形成する。これがkuevicoの描く未来です。